労災の休業補償の計算ツール(給付基礎日額から計算)

執筆:元取締役の総務担当最終更新:2026年9月29日月給別の早見表と、健康保険の傷病手当金との金額比較を追加

仕事中や通勤中のけが・病気で働けなくなったときに支給される休業(補償)等給付を計算します。 給付基礎日額の60%に休業特別支給金の20%を足した合計80%が、休業4日目から支給されます。

この給付でいちばん間違えやすいのが給付基礎日額の求め方です。 原則の計算のほかに3つのチェックがあり、そのうち年齢階層別の限度額は毎年8月1日に改定されます。当ツールは令和8年8月1日改定後の金額で計算しています。

先に金額の目安を知りたい方は、月給別の早見表をご覧ください。

令和8年8月1日改定の年齢階層別限度額・最低保障額4,350円に対応
この3か月分を賃金総額として計算します
89〜92日。分からなければ92のままで構いません
最初の3日は待期期間なので労災からは支給されません

受け取れる額 211,275円(1日あたり 7,825円 × 27日)

給付基礎日額9,783円原則で決定
休業補償給付(60%)158,463円
休業特別支給金(20%)52,812円
支給対象の日数27日待期3日を除く

📌 待期の3日間は労災から支給されませんが、業務災害なので事業主に休業補償の義務があります (労働基準法76条。1日につき平均賃金の60%)。目安は 17,607円 です。 通勤災害の場合はこの義務がありません。

給付基礎日額がどう決まったか

① 原則賃金総額 900,000円 ÷ 92日 = 9,783円
③ 最低保障額4,350円(令和8年8月1日〜)
④ 年齢階層別療養開始から1年6か月を過ぎていないため適用されません
決定した日額9,783円(原則)

参考:同じ月給で健康保険の傷病手当金だったとすると1日あたり約 6,667円 (標準報酬日額の3分の2)です。労災は80%なので1日あたり約 1,158円 多くなります。なお業務中・通勤中のけがに健康保険は使えないため、これは制度の水準を比べるための参考値です。

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月給別の早見表(給付基礎日額と受取額)

月給から給付基礎日額を出し、休業日数ごとの受取額を並べました。 月給制(毎月同額・賞与を除く)で、直前3か月の暦日数を91日として計算しています。 実際の暦日数は四半期によって90〜92日と変わるので、その分だけ前後します。

休業(補償)等給付の受取額(業務災害・40歳未満・療養開始から1年6か月以内)
月給給付基礎日額1日あたり
60%+20%
30日休業60日休業90日休業180日休業
200,000円6,594円5,274円142,398円300,618円458,838円933,498円
250,000円8,242円6,593円178,011円375,801円573,591円1,166,961円
300,000円9,891円7,912円213,624円450,984円688,344円1,400,424円
350,000円11,539円9,230円249,210円526,110円803,010円1,633,710円
400,000円13,187円10,549円284,823円601,293円917,763円1,867,173円
500,000円16,484円13,186円356,022円751,602円1,147,182円2,333,922円
600,000円19,781円15,824円427,248円901,968円1,376,688円2,800,848円

休業日数の列は待期3日を含んだ通算の日数です。 労災から支給されるのは4日目からなので、 たとえば30日の列は27日分の金額になっています。

健康保険の傷病手当金より1割以上多くなります

仕事中・通勤中のけがに健康保険は使えませんが、 「労災だと何がどう違うのか」を金額で見ておくと判断がぶれません。 健康保険の傷病手当金は標準報酬月額の日額の3分の2(約66.7%)で、 労災の80%とは差があります。

1日あたりの受取額の比較(同じ月給の場合)
月給労災の休業給付
60%+20%
健保の傷病手当金
(参考)
差90日休んだ場合の差
200,000円5,274円4,444円+830円+72,210円
250,000円6,593円5,556円+1,037円+90,219円
300,000円7,912円6,667円+1,245円+108,315円
350,000円9,230円7,778円+1,452円+126,324円
400,000円10,549円8,889円+1,660円+144,420円
500,000円13,186円11,111円+2,075円+180,525円
600,000円15,824円13,333円+2,491円+216,717円

健保の欄は、月給をそのまま標準報酬月額とみなした概算です。 実際は等級表に当てはめるので数百円ずれます。 また傷病手当金には支給開始から通算1年6か月という期限がありますが、 労災の休業給付に日数の上限はありません (療養開始から1年6か月を過ぎて一定の状態にあるときは傷病年金へ切り替わります)。

差はもうひとつあります。待期3日の扱いです。 業務災害なら、労災から出ない待期3日分について 事業主に休業補償(平均賃金の60%)の義務があります。 月給300,000円なら17,802円です。 健康保険の傷病手当金には、この仕組みがありません。 通勤災害の場合も事業主の義務はないので、待期3日は無給になります。

労災か健康保険かで、金額が大きく変わります

仕事中・通勤中のけがや病気には、健康保険は使えません。 すべて労災保険の対象です。窓口で健康保険証を出してしまった場合は、 医療機関に労災である旨を伝えて切り替えてもらう必要があります。

金額の面でも労災のほうが手厚くなっています。

労災(休業補償給付)健康保険(傷病手当金)
支給割合80%(60%+特別支給金20%)約66.7%(標準報酬日額の3分の2)
待期3日(通算)3日(連続)
待期中の補償業務災害なら事業主に義務ありなし
医療費の自己負担なし(通勤災害は200円)3割
支給期間治ゆまたは療養開始後1年6か月まで通算1年6か月

同じ傷病で両方を受け取ることはできません。 労災の休業補償給付を受けられる場合、健康保険の傷病手当金は支給されません。

給付基礎日額は3段階でチェックされます

給付基礎日額は、労働基準法の平均賃金に相当する額です。 原則は次の式で求めます。

直前の賃金締切日以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の暦日数(1円未満切上げ)

賞与や臨時に支払われた賃金は含めません。 ここで計算した額に対して、さらに3つの下支え・頭打ちが働きます。

① 労働基準法12条の最低保障

日給制・時間給制・出来高払制の場合、 「賃金総額 ÷ 実労働日数 × 60%」と比べて高いほうが採用されます。 働いた日数が少ない月があると、暦日数で割った原則の額が低くなりすぎるためです。

② 最低保障額(自動変更対象額)

令和8年8月1日からは4,350円です(前年度は4,250円)。 これを下回る場合はこの額まで引き上げられます。

③ 年齢階層別の最低・最高限度額

休業給付では療養を始めてから1年6か月を経過した日以後の分に適用されます。 それまでは適用されません。年金給付(傷病年金・障害年金・遺族年金)では、 年金が支給される最初の月から適用されます。

年齢階層最低限度額最高限度額
19歳以下5,682円14,450円
20〜24歳6,221円14,450円
25〜29歳6,852円16,486円
30〜34歳7,146円20,499円
35〜39歳7,420円22,399円
40〜44歳7,727円24,827円
45〜49歳7,833円25,746円
50〜54歳7,778円26,264円
55〜59歳7,467円27,053円
60〜64歳6,509円23,364円
65〜69歳4,350円17,709円
70歳以上4,350円14,450円

令和8年8月1日〜令和9年7月31日に適用される金額です。 令和8年8月1日の改定では、全年齢階層で最低・最高とも引き上げられました。

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待期3日の扱いは、業務災害と通勤災害で違います

休業の最初の3日間は待期期間で、労災保険からは支給されません。 ここで多くの方が見落とすのが、業務災害の場合は事業主に休業補償の義務があることです。

業務災害通勤災害
待期3日の補償事業主に義務あり(労基法76条。平均賃金の60%)義務なし
一部負担金なし200円(最初の休業給付から控除)
給付率どちらも80%(60%+20%)で同じ

会社が制度を知らずに待期3日を無給にしている例があります。 業務中のけがであれば、この3日分は会社が払うものです。

一部だけ働いた日(部分算定日)の計算

午前だけ働いて午後は通院した、というような日は部分算定日として次の式で計算されます。

(給付基礎日額 − その日の実労働に対して支払われる賃金)× 80%

厚生労働省の計算例では、給付基礎日額15,000円・その日の賃金4,500円のとき、 (15,000 − 4,500)× 60% = 6,300円が保険給付分になります。 これに特別支給金の20%分が加わります。

通勤災害と認められる範囲

通勤とは、就業に関して合理的な経路および方法で行う移動をいいます。 対象になるのは、住居と就業場所の往復、複数の就業場所の間の移動、 単身赴任先と帰省先住居の間の移動の3類型です。

逸脱・中断があった場合

通勤と関係のない目的で経路をそれること(逸脱)や、 経路上で通勤と関係のない行為をすること(中断)があると、その間とその後の移動は通勤になりません。

ただし、次の「日常生活上必要な行為」をやむを得ない事由で最小限度行う場合は、合理的な経路に戻った後は再び通勤として扱われます。

  • 日用品の購入その他これに準ずる行為
  • 職業訓練や学校での教育など、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  • 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  • 病院・診療所で診察や治療を受けること
  • 要介護状態にある配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹および配偶者の父母の介護(継続的または反復して行われるものに限る)

なお、経路上のトイレを使う、公園で短時間休む、店でタバコや雑誌を買う、 駅構内でジュースを立ち飲みするといったささいな行為は 逸脱・中断にあたらず、通勤として扱われ続けます。

障害・遺族・葬祭料の早見表

治ゆ後に障害が残った場合、亡くなった場合の給付です。 給付基礎日額を入れると金額が出ます。

葬祭料の定額部分は令和8年4月1日から330,000円(旧315,000円)に引き上げられています
上の計算ツールで求めた金額を入れてください

第12級の障害(補償)等一時金:1,560,000円(一時金)

障害(補償)等給付1,560,000円給付基礎日額の156日分
障害特別支給金200,000円一時金
遺族(補償)等年金2,010,000円年額・201日分
遺族特別支給金3,000,000円人数にかかわらず一律
葬祭料等630,000円330,000円+30日分と60日分の高いほう

⚠️ 令和9年4月1日から、遺族(補償)等年金は遺族が1人の場合も一律175日分になり、あわせて夫の「55歳以上」という要件が撤廃されます (令和8年法律第60号)。

障害(補償)等給付の等級別給付日数

第1〜7級は年金、第8〜14級は一時金です。 年金と一時金では性質が違うため、日数の多さがそのまま有利さを意味するわけではありません。

等級種別給付基礎日額の日数
第1級年金313日分
第2級年金277日分
第3級年金245日分
第4級年金213日分
第5級年金184日分
第6級年金153日分
第7級年金131日分
第8級一時金503日分
第9級一時金391日分
第10級一時金302日分
第11級一時金223日分
第12級一時金156日分
第13級一時金101日分
第14級一時金56日分

葬祭料等は令和8年4月に引き上げられました

葬祭料等は「330,000円+給付基礎日額の30日分」と 「給付基礎日額の60日分」の高いほうです。 定額部分は令和8年4月1日から315,000円→330,000円に引き上げられました。

この改定を反映していない解説ページが多く残っています。 同時に介護(補償)等給付の最低保障額も引き上げられ、 常時介護は90,790円、随時介護は45,400円になっています。

令和9年4月に遺族給付が変わります

令和8年7月に公布された改正法(令和8年法律第60号)により、令和9年4月1日から次の点が変わります。

  • 遺族が1人の場合の遺族(補償)等年金が、153日分から一律175日分に
  • 夫について「妻の死亡時に55歳以上」という要件を撤廃(男女差の解消)
  • 脳・心臓疾患など業務起因性の判断が難しい疾病の消滅時効を2年から5年に延長

よくある質問

給付基礎日額はどうやって計算しますか

原則は「直前の賃金締切日以前3か月間に支払われた賃金の総額 ÷ その3か月の暦日数」で、1円未満は切り上げます。分母が労働日数ではなく暦日数(90〜92日)である点が間違えやすいところです。月給30万円なら、90万円÷91日=9,891円になります。そのうえで3段階のチェックが入ります。1つめは日給制・時間給制・出来高払制の方だけに適用される労働基準法12条の最低保障(賃金総額÷実労働日数×60%)、2つめは最低保障額(自動変更対象額)、3つめは年齢階層別の最低・最高限度額です。3つめは休業給付では療養開始から1年6か月を経過してから適用されます。当ツールはこの3段階をすべて計算し、どこで決まったかを表示します。

休業が3日で済んだ場合は何ももらえませんか

労災保険からは支給されません。ただし業務災害であれば、待期の3日間について事業主に休業補償の義務があります(労働基準法76条。1日につき平均賃金の60%)。通勤災害の場合はこの義務がないため、就業規則等に定めがなければ無給になります。

会社が労災を使わせてくれません

労災の請求は労働者自身が労働基準監督署に行うもので、会社の許可は必要ありません。請求書には事業主の証明欄がありますが、協力を得られない場合はその旨を書いて提出できます。労働基準監督署に相談してください。

給付基礎日額に残業代やボーナスは含まれますか

残業代・通勤手当・住宅手当などの手当は含まれます。一方、賞与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)と、結婚手当のような臨時に支払われた賃金は含まれません。ボーナスは別途、特別支給金の算定基礎日額に反映されます。

休業補償給付はいつまでもらえますか

治ゆ(症状固定)するまで、または療養開始後1年6か月までです。1年6か月を経過しても治ゆせず傷病等級1〜3級に該当する場合は、傷病(補償)等年金に切り替わります。該当しない場合は休業補償給付が続きます。

労災の休業補償は健康保険の傷病手当金よりどれくらい多いですか

1日あたりで1割以上多くなります。労災の休業(補償)等給付は給付基礎日額の60%に休業特別支給金20%を足した80%、健康保険の傷病手当金は標準報酬月額の日額の3分の2(約66.7%)です。月給30万円で比べると、労災が1日7,912円、傷病手当金が1日6,667円で、90日休むと差は10万円を超えます。さらに労災には日数の上限がありません(傷病手当金は支給開始から通算1年6か月まで)。加えて業務災害なら、労災から出ない待期3日分について事業主に休業補償の義務があります。なお仕事中・通勤中のけがや病気に健康保険は使えないので、これは制度を選べるという話ではなく、労災を使わずに健康保険で処理してしまうと本来より少ない額しか受け取れない、という話です。

「労災 休業補償 シュミレーション」で探していますが、このページで合っていますか

合っています。正しい表記は「シミュレーション」ですが、どちらで検索されても同じこのページです。月給と休業日数を入れるだけで、給付基礎日額の内訳から支給額までその場でわかります。

計算の前提

  • 賃金総額は「月給×3か月」として計算しています。実際は賃金締切日ベースの3か月間です
  • スライド改定(休業給付基礎日額のスライド)は考慮していません
  • 端数処理は、給付基礎日額を1円未満切上げ、日額の給付を1円未満切捨てとしています。実際の決定額と数円の差が出ることがあります
  • 待期3日が連続である必要があるかは、公表資料で明示的な記載を確認できませんでした。条文上は通算と読める構造ですが、断定を避けています
  • 障害特別支給金は、公表資料でレンジ表記しか確認できなかった等級の額を掲載していません

実際の支給額は労働基準監督署の決定によります。 請求手続きや認定の可否については、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

出典・根拠

最終更新:2026年9月29日/本ページの計算結果は概算です。 実際の支給額は労働基準監督署の決定によります。