退職後の健康保険はどれが安い?(任意継続・国保・扶養の比較)
退職すると健康保険を自分で選ぶことになりますが、選択を誤ると年間で数十万円の差が出ます。 とくに会社都合で退職した人には国民健康保険が大幅に安くなる制度があり、 これを知らずに任意継続を選んでしまうケースが少なくありません。 あなたの条件で3つを比較します。
最も安いのは 国民健康保険:年間 16.1万円
💡 非自発的失業者の軽減により、国民健康保険が年間 325,864円 安くなっています。軽減がなければ 487,099円でした。 この軽減は市区町村への申請が必要で、自動では適用されません。
それぞれの注意点
任意継続
- 標準報酬月額は320,000円が上限(令和8年度)
- 申請期限は退職日の翌日から20日以内
- 在職中と違い会社負担がないため保険料は約2倍になります
- 令和4年1月から任意脱退が可能です
国民健康保険
- 非自発的失業者の軽減を適用(前年の給与所得を30%とみなして計算)
- 軽減には市区町村への申請が必要です。自動では適用されません
- 軽減期間は離職日の翌日が属する月から、その年度の翌年度末まで
- 料率は東京都新宿区の令和8年度の値です。自治体により異なります
年収別の早見表(どっちが安いか)
退職前の年収別に、任意継続と国民健康保険の月額保険料を並べました(40歳以上65歳未満)。 いちばん右の2列が、その年収ならどちらを選ぶと安いかです。
| 退職前の年収 | 任意継続 | 国保(自己都合) | 国保(会社都合) | 自己都合なら | 会社都合なら |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 29,250円 | 24,311円 | 5,445円 | 国民健康保険 | 国民健康保険 |
| 350万円 | 34,125円 | 28,106円 | 6,583円 | 国民健康保険 | 国民健康保険 |
| 400万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 32,334円 | 9,973円 | 国民健康保険 | 国民健康保険 |
| 450万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 36,671円 | 11,274円 | 国民健康保険 | 国民健康保険 |
| 500万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 41,007円 | 13,990円 | 任意継続 | 国民健康保険 |
| 600万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 49,681円 | 16,592円 | 任意継続 | 国民健康保険 |
| 700万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 58,788円 | 19,324円 | 任意継続 | 国民健康保険 |
| 800万円 | 37,440円 上限で頭打ち | 68,545円 | 22,251円 | 任意継続 | 国民健康保険 |
読み取れることが3つあります。
ひとつ目。会社都合で辞めた方は、どの年収でも国保が安くなります。 年収800万円の方でも、任意継続37,440円に対して国保は22,251円です。 「一般に任意継続のほうが安い」と書いている解説をよく見ますが、 非自発的失業者の軽減が使えるならその前提は成り立ちません。 ただしこの軽減は市区町村への申請が必要で、黙っていても適用されません。
ふたつ目。自己都合の場合は、年収450万円と500万円の間で逆転します。 それより下なら国保、上なら任意継続です。 任意継続は標準報酬月額32万円(年収384万円相当)で頭打ちになるので、 高収入の方ほど任意継続が有利になります。
みっつ目。任意継続の列は、年収400万円から上がすべて同じ金額です。 在職中は会社が半分払っていたものを全額自分で払う形になるため、退職前の給与明細の健康保険料のおよそ2倍が目安になります。
この表は手入力ではなく、上のシミュレーターと同じ計算エンジンから生成しています。 前提が2つあります。国保の所得割は前年1年分その年収があったものとして計算しているので、 年の途中で退職した場合の実際の前年所得とは違います。 また国保の料率は自治体ごとに違います。 正確な金額は、お住まいの市区町村の料率で計算してください。 扶養に入れるかどうかは年収では決まらないので、この表には入れていません (下の「日額3,612円」の判定をご覧ください)。
会社都合退職なら国保が7割引になる(非自発的失業者の軽減)
倒産・解雇・雇い止めなどで離職した人は、国民健康保険料の計算にあたって前年の給与所得を100分の30(=3割)とみなして計算されます。 実質的に給与所得が7割カットされた扱いになるため、保険料が大幅に下がります。
対象になる人
- 離職日時点で65歳未満であること
- 雇用保険の受給資格者証に記載された離職理由コードが次のいずれかであること
- 特定受給資格者:11・12・21・22・31・32(倒産、解雇など)
- 特定理由離職者:23・33・34(雇い止め、正当な理由のある自己都合など)
見落としやすい3つのポイント
- 申請しないと適用されません。自動的には軽減されないため、 市区町村の窓口に雇用保険受給資格者証を持って申請してください。
- 軽減されるのは給与所得だけです。副業の事業所得や不動産所得は軽減の対象外なので、これらが多い人は効果が薄くなります。
- 高額療養費の所得区分にも同じ30%が適用されます。医療費が高額になったときの自己負担限度額も下がるため、二重にメリットがあります。
軽減が適用される期間は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。 たとえば2026年8月に離職した場合、2026年8月から2028年3月までが対象になります。
任意継続の3つの注意点
任意継続とは、退職前に加入していた健康保険を最長2年間そのまま使い続ける制度です。 手続きの期限が短いこと、保険料が在職中の約2倍になることに注意が必要です。
1. 保険料は在職中の約2倍
在職中は保険料を会社と折半していましたが、任意継続では全額が自己負担になります。 給与明細に書かれていた健康保険料の、およそ2倍を想定してください。
2. 標準報酬月額には上限がある
令和8年度の上限は32万円です。それ以上の給与だった人は32万円で頭打ちになるため、 高収入だった人ほど任意継続が相対的に有利になります。 なお「上限30万円」と書いている情報は令和6年度以前のもので、現在は誤りです。
3. 申請期限は20日以内
資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申請する必要があります。 この期限を過ぎると原則として加入できません。退職前から準備しておいてください。 なお令和4年1月から、任意継続を途中でやめて国保に切り替えることが可能になりました。
家族の扶養に入れるかは「日額3,612円」が分かれ目
家族の健康保険の扶養に入れば保険料の負担はゼロになります。 ただし年間収入130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)という要件があり、失業給付もこの「収入」に含まれます。
判定は年間ではなく日額で行われ、基本手当日額が3,612円以上だと 受給期間中は扶養に入れません(130万円 ÷ 360日 = 3,611.1円が基準)。
実務上は、受給期間中は国保または任意継続、受給終了後に扶養へ切り替えるという2段構えになることが多いです。また、給付制限期間中(自己都合退職の1ヶ月間)は まだ給付を受けていないため、その間だけ扶養に入るという選択もできます。
忘れがちな2つの負担
国民年金
退職すると国民年金(令和8年度は月額17,920円)の支払いが発生します。 ただし失業者には特例免除があり、本人の前年所得をゼロとみなして審査されるため、 多くの人が全額免除の対象になります。 全額免除でも老齢基礎年金の2分の1は将来受け取れるので、未納にせず必ず申請してください。 ただし配偶者や世帯主の所得は審査対象になる点に注意が必要です。
住民税
住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職して収入がなくなっても支払いが続きます。 在職中は給与から天引き(特別徴収)されていたものが、退職後は自分で納付(普通徴収・年4回)に 切り替わり、1回あたりの負担が大きく感じられます。失業期間の資金計画では必ず見込んでおいてください。
よくある質問
途中で切り替えられますか
令和4年1月から、任意継続は本人の申し出により任意にやめることができるようになりました。 そのため「1年目は任意継続、2年目は国保」という選び方も可能です。 国保料は前年所得で決まるため、退職の翌々年は所得が下がって国保が安くなるケースが多くあります。
国保の保険料は自治体でどのくらい違いますか
料率は市区町村ごとに定められており、同じ所得でも自治体によって差があります。 このツールは東京都新宿区の令和8年度料率で計算しているため、 正確な金額はお住まいの市区町村にご確認ください。
扶養に入っても失業保険はもらえますか
扶養に入ることと失業保険の受給は別の制度なので、受給自体は可能です。 ただし日額3,612円以上を受給している間は扶養の要件を満たさないため、 扶養から外れる手続きが必要になります。
出典・根拠
- 協会けんぽ「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」
- 協会けんぽ「令和8年度の保険料率」
- 新宿区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減について」
- 新宿区「国民健康保険料の計算方法(令和8年度)」
- 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするときの手続き」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
最終更新:2026年9月25日/本ページの計算結果は概算です。 国民健康保険料は東京都新宿区の令和8年度料率で計算しており、自治体により異なります。